UXとUIが異なるという話題がつきず、1年ほど前にUX DAYS TOKYOのスタッフでもその話題が良く登ったので「UXとUIの違い」という記事も書いてみましたが、私の個人的な意見としては、区別することよりも“UXは組織で取り組むべき”という意識をもっと持つ必要があると考えています。
UXとUIを区別しなくても大丈夫
なぜなら、UI改善でプロジェクトが良くなる例もたくさんあるからです。例えば、世界的に有名な事象、UIを変えただけで売上が伸びた「300億円ボタン」です。方法としてはユーザーインタビューを行い、その結果としてUI改善しているので、人によっては、UXの要素であるリサーチをしたからだ。と思う方かもしれませんが、この問題を事前に察知していれば問題発生さえなかったと言えます。
この事例からもUIを改善するとUXが改善できることがわかります。UIとUXは別のものでなく完全に繋がっています。冒頭に述べたUIとUXを区別することよりも、UXはUI(デザイン部)だけでカバーできない。と捉えるのが本質です。認識を間違えてしまうと、捉え方も変わり、問題提起も変わり、対策も変わり、本質と異なったことをしてしまいます。成功の道に進むことはありません。
なぜ、区別したがるのか?
UI改善してもUX改善にならないことが現場では起こります。それ故に区別をしたがるのかもしれませんが、これは認識した問題が間違っていることで起こるミスです。UIを改善することで問題が解決できれば良いですが、改善されなければ対策が違う。問題提起が違うので解決できません。正しい問題提起をしなければ良い“UX”設計を行うことはできません。
問題提起はUXでも最重要だから正しいかを問うべき
問題提起の間違いと同じように、捉え方はUXの中で重要な要素になります。視点が変われば物事が180度違って見えます。カンファレンスで直接スピーカーに疑問や捉え方のレクチャーを受けることによって、自分の考えが間違っていないかが確認ができます。リアルイベントの大きなメリットです。ビジネス上、ベストプラクティスはケースバイケースですから、それらを判断する視点が身につきます。
海外はチーム参加が当たり前
視点が身につくだけでなく、他にもリアルイベントに参加する利点があります。日本企業はカンファレンスに数名のみ参加させレポートを出す習慣が多いようです。一見効率的に思えるやり方ですが、チームで参加した企業とそうでない企業とでは差があると推測しています。
数名が参加し、レポートを出したり、シェアすることは一見コストパフォーマンスが良いように見えますが、実際にはシェアする時間は、受講と同じ時間を取られることになります。何より、レポートを作った個人の習得レベルに依存してしまいます。UX DAYS TOKYOでは読書会を行っていますが、同じ書籍を読んでも個人のレベルでアウトプットの質が違いを切に感じます。
欧米では、国内開催のカンファレンスの多くはチーム全員で参加することが多いといいます。UX DAYS TOKYOも20〜30名で参加される企業様もいらっしゃいますが多くありません。
シンガポールで行われたノーマン・ニールセンのワークショップには、シンガポール政府から3日間×50名参加していました。一つ10万円ほどのワークショップなので総額1500万円です。組織改革のための参加ということでした。
同様にオーストラリアでは、Web DirectionsカンファレンスへANZ(オーストラリア最大の銀行)から80名のエンジニアが参加していました。組織の変革を行う時は一気呵成に学ぶのが今後の流儀といえます。他にも、チームで参加するメリットについてサッカーチームとしてご紹介できればと思います。
UX DAYS TOKYO2019に来日するGoogleのシニアUXデザイナー、クリスタルさんのワークショップに全米のGoogle社員2500人が集まってリアルの勉強会を行ったそうです。それだけリアルの勉強会は重要度あると言えます。
サッカーチームで考えてみる
カンファレンスやワークショップは、内容が聞けてノウハウだけが手に入れば良いのか?というと、それだけではありません。強いチームは実際に優れたコーチに指導されて強くなります。間接的な指導を受けている訳ではありません。体感し、その空気を読むことで学ぶことが多くあります。
他にもスポーツで例えるとわかることがあります。例えば、サッカーでは試合に出るたびにチームの結束が強くなり強いチームになります。UXの現場では試合がないので、カンファレンスに出ることで、この結束力が芽生える効果があります。
優れたプレイヤーがいても、一人では勝つことは至難の技です。UXも同じで、理解がいるチームがいるからこそ、難しい仕事にチャンレンジできます。
ビジネスはスピード
イベント参加レポートは内容の全てを解説することはできません。それは、人によって刺さる部分が異なるからです。そして、タイムラグも発生するので、モチベーションが下がってしまうこともデメリットです。「同じ釜の飯を食う」という言葉のように、同じタイミングで同じ体験をしていると話が進みやすくなります。ビジネスをゲームや戦と例えることがありますが、結束力のある強いチームに勝つには自分たちのチームも強くする必要があります。
みんなで参加することで、スピードが変わります。「ビジネスはスピード」という言葉もあるように、全体の意識やモチベーションによってスピードが異なります。
連携があるから成功する
サッカーのゴール獲得には、正確なパスが必要であり、そのためにも連携が重要になります。仕事も同じです。一緒に仕事をする人とはあうんの呼吸で行いたいと思いますが、なかなか思う通りにはいきません。呼吸をあわせ連携できるのはマインドセットが大切になります。マインドセットを持つのは教育や知識が大切になります。ぜひ、チーム全体でチーフや上長も含めご参加いただくことをお薦めします。
UXは組織改革であり、視点や思考が大切
UXは事業企業でないと難しい。という言葉を聞くようになりました。何かしらのサービスを行っている企業には絶対に必要と言えますが、受託企業だとしても、その理解がなければ連携もできず良いものを生み出すことはできません。企業を外から見る立場として共同で良いものを作るスタンスは必要です。受託企業だからと学びを止めず、ステークフォルダと共にビジネス成功のためのステップを勉強していきましょう。