夜中の通販番組で「ダイエットに効く!腹筋トレーニングマシーン」が紹介されており、番組のナビゲーターが、笑顔で楽しそうに運動をしています。
「1ヶ月でこんな効果が!」と、劇的に体系が変化した利用者の写真も紹介され、簡単にダイエットが成功すると感じたため、思わず購入してしまいます。
家に器具が届いても、買ったことに満足して開封しない。いざトレーニングを始めてみても3日坊主となり、そのまま部屋の隅に放置してしまう。
こんな経験したことはありませんか?
私も何度も経験しています。調理グッズ、掃除用品など、結局上手く使いこなせません。最終的には「使えない道具だった」と感じ、買ったことを後悔しました。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?それは、問題を楽に解決できる「手法」から入ってしまうために起こります。「この器具を使えば、日頃の問題が解決できる」「使い方さえわかれば目的が達成できる」と錯覚したからです。
同じことが、UXの学びの場でも起きています。
例えば、「カスタマージャーニーマップの作り方を学びたい」とします。研修を受けたことで満足してしまい、自社に持ち帰って実務で試そうと思っても、何をしたらいいのか分からない状態に陥ります。結果として、「カスタマージャーニーマップは、仕事では使えない」と判断してしまうのです。
手法のやり方だけわかっても、UXを実践できる訳ではありません。
なぜ手法を学ぶだけでは駄目なのか?
手法を学びはじめると、やり方を知っただけでマスターしたような気になってしまうことがあります。
一番の問題は、「手法が何でも解決してくれる」と過剰に期待してしまうことにあります。
手法はあくまで「道具」でしかないと認識することが大切です。「何が問題なのか?」「何のためにその手法を使うのか?」という視点と思考なしに、手法を使いこなすことはできません。ダイエット器具に対して過剰に期待をし、買ってみて使い方を知っただけで、結果が出ないことと同じです。
ユーザーの視点に立つことや、問題発見や解決の思考が欠けている状態では、プロセスの一部を取り入れただけで、課題解決にまで至ることができません。
視点と思考がないと、手法に振り回されてしまう
ダイエット器具の例でも、「痩せる」という目的を達成するには、現在の筋肉量や自分の性格といった課題を認識する必要があります。「課題を発見する視点」と「最終的にどんな自分になりたいかという思考」を持ちながら、目標に向かって日々取り組むことがダイエット実践の大前提です。
視点と思考という前提があって、はじめて目標を達成するサポートの一つとして、道具を効果的に使えるようになります。
UXの手法やフレームワークは、あくまで「ユーザーを取り巻く複雑な状況を切り取り、視点や思考を定めていくうえで便利な道具」として使えるものになります。
視点と思考ができていれば、手法を知らなくても、自分なりのやり方でユーザー視点の問題発見や解決ができるようになります。状況に応じて手法をアレンジしたり、新しく手法を編み出す人になれるのです。
問題点を発見し、ユーザー視点で解決する「視点」と「思考」をしっかりと身につけた上で、手法を学ぶことが大切です。