7月1日に「最高の脳で働く方法」の読書会を行いました。脳は身体の一部ですが、生活の中でどのように関わり、動いているのかイメージしにくいですよね。
この書籍では、脳の動きを物語にして普段の生活でどのように関わっているのかを解説しています。また、脳を舞台に例えて、どのように動くかを解説しているため理解しやすくなっています。
著者は心理学者ではなく、ビジネスコンサルタントです。コンサルタントの視点から仕事と脳の関わりについて、解説しています。よくあるビジネスの現場や家庭、人間関係で直面する問題点と、脳の関係がどのようにリンクしているかわかりやすいです。スマートに仕事をしている人でも、実は自分と同じ悩み・状況だったりします。それをどのように超えられるかは自分次第で、脳の状態を知ると関わり方が変わります。
思考も脳の特性で変わってくる
「自分の思考は自分でコントロールできる」と思いがちですが、脳の特性によっても「思考」は作られています。ですので、脳の特性を知るとセルフコントロールがしやすくなります。
著者は脳を「ステージ」に例え、セルフコントロールを「演出家」として解説しています。脳を知り、自分をコントロールできる客観的な演出家の視点を持つことができれば、最高の仕事・人生になります。そんなヒントを与えてくれる書籍です。
脳の特性とシステム1,2のモードの関係
意識的に考える思考(システム2モード)は、リソースを多く消化するので、人は無意識(システム1モード)に行動することが多いです。言われてみると、呼吸・歩く・料理するなど、無意識に身体を動かしています。
脳の働きは「理解、判断、想起、記憶、抑制」という5つの働きをしていて、1日に利用できる脳内リソースが限られているので、無駄に使わない方が良いです。脳の活動も体力と同じだと考えると、1日中ずっと走っていられないのと同じで、ずっと考え続けるのは難しいことがわかりますね。
また、大脳基底核を使うことができるようになると、意識しなくても脳のリソースが抑えられるそうです。慣れた作業が疲れにくいのは、そんな理由からかもしれません。
ダニエル・カーネマン著の「ファストアンドスロー」で言えば、意識して行う「システム2」から無意識のうちに行う「システム1」になるということですね。例えば、はじめて通る道は意識的にどこで曲がるか気にしていますが、何度も繰り返し通ると無意識に曲がることができます。仕事でも同じことが言え、何度も繰り返し同じ作業を行うことで、あまり注意を払わずにできるようになり、能動的な作業と組み合わせられます。作業をルーティン化させることも脳のリソースを節約することができます。
脳はいくつかの部位に分かれ、活動内容によって活発になる場所が異なります。ここでは、主に4つの脳の部位と機能を紹介します。
- 前頭前皮質:主に考えることに使われる場所、繰り返し作業すると疲れるのでリラックスが必要
- 大脳基底核:前頭前皮質で行われなれた作業が行われる
- 前帯状皮質:いろんなことに反応する場所
- 腹外側前頭前皮質:制御装置
作業(仕事)をする上では、「前頭前皮質」がメインに動き、慣れると大脳基底核に入るイメージです。そして、ご褒美や警戒の反応・制御をする「前帯状皮質」や「腹外側前頭前皮質」も仕事に関わってきます。ちなみに、脳は、「副腎髄質」から出るホルモンによって管理・調整されています。
フロー状態は脳を効率的に使っている状態
上手に脳が使えている「フロー状態」にするには、色々なことに反応してしまう「前帯状皮質」を動かさないように、頭の中を一度空っぽにして、他のことを考えずに没頭しなければなりません。
フロー状態は、俳優が役に入り込む状態なので、没入するために時間がかかります。また、演じるためには、役のイメージが明確になっていなければならないので、素描など頭の中のものを形にアウトプットすると作業が進みやすくなるそうです。
あまり力が入り過ぎると良い演技ができないように、フロー状態は、少しリラックスした状態が良いというのが興味深かったです。この”少しリラックスした状態”をDMN(デフォルトモードネットワーク)と呼び、脳のフロー状態には必要です。
スポーツ選手がルーティンを行うのは、フロー状態になるためとも言われています。いくつかの動作をすることで、無心になり集中しやすくなるからです。
マルチタスクはミスが多くなる
現代は、ながら作業のようなマルチタスクができる人が増えてきたと言う報道もありますが、人間が数十年で大きく進化をすることはありません。マルチタスクに見えても、脳科学的にはタスクを細かく分けて行っているだけで事実上不可能と言われています。
また、マルチタスクを行うと、ハーバード大学卒業生でも、小学生レベルのことしか考えられなくなるそうです。つまり、ミスをしやすくなってしまいます。
他の研究では、マルチタスクをすると8〜9割のミスが多くなり、時間的にも別々に行うより1.5倍かかる結果がでています。他にも、脳の特徴について、ツァイガルニク効果・ミラーの法則などが紹介されていました。
プレッシャーに打ち勝つためのマインドセット
書籍には、モノの捉え方に”脳の特性が影響している”と書かれています。長い人生、時に、良い方向にいかない場合があります。脳の特性を理解して、上手な演出家になろう!と言います。
捉え方次第で脳の動きも変わる
紹介されている物語では、主人公のポールが会社の会議でミスをしてしまいます。その日、帰宅すると家でゴロゴロしている息子を見て怒りが湧いてきます。「なんで勉強もしないでゴロゴロしているんだ!」と。結果的に子供と喧嘩になりました。このような経験はみなさんもあるのではないでしょうか?
自分では八つ当たりしているつもりはなくても、仕事がうまく行かない時は周りの状況をポジティブに考えられず、プライベートもうまくいかなくなります。それは、脳の動きによって情動がネガティブになってしまうからだそうです。
捉え方と脳の状態
人は、次々起こる無数の判断を「大脳辺縁系」で、何にどの様に注意すべきか判断しています。大脳辺縁系は、低いレベルで興奮しやすい特性があります。いくつもの選択肢や考えることがあると、判断を下すエネルギーが不足してしまいます。
プレッシャーがある時は、冷静を保つのではなく、動じないことが脳には良いと解説されています。つまり、色々と考えず、何に注意すべきかだけを判断すれば良いのです。
情動には大きくポジティブとネガティブの2つに別れます。ポジティブと取るか、ネガティブと取るかが分かれ道で、ポールの例の様に状況が変わります。
ネガティブは、身の危険を察知する際に有効のものなので、急速に・長く維持し、抑えがたい興奮となりやすい。結果として、負のスパイラルに陥りやすくなると紹介されていました。それらを回避するにはシンボリック・ラベリングが有効と紹介されています。
シンボリック・ラベリングは笑いにしたヒトコト
負のスパイラルから抜け出すシンボリック・ラベリング
ネガティブの情動で、負のスパイラルに入ってしまうと、人生の成功はないです。ネガティブで捉えてばかりでは、周りも嫌になり協力的にならないでしょうし、敵ばかりが揃うことになるので、楽しい人生とは言えません。
負のスパイラルから抜け出すには、シンボリック・ラベリングをすると良いと書かれていました。英語なのでイマイチ、ピンと来なかったのですが、読書会で発表を担当していただいた戸田さんが「笑いの一言で表現すること」と解説されたのは、目からウロコでした。
また、脳にとって、いろいろと考えることは、多くの選択肢をしなくてはならない忙しい状態で、脳に負担をかけています。ポジティブな一言で笑い飛ばすことができれば、人生も脳も疲れずに済むと腑に落ちました。
この他、仕事現場で敵を作らずに成功させる方法や、デザイン批評(デザインディスカッション)にも繋がるような、相手への気配りの方法などが紹介されていました。
私は電子書籍だったので厚さはわからなかったのですが、紙の書籍だと460ページにも及ぶ内容です。すべてをカバーできたわけではありませんが、私達が勉強している心理学にも繋がるところが多く出てきました。視点を変えて、脳や人間関係について理解が深まりました。仕事・プロジェクトを成功させるためにも、自分を演出できるようにしていきましょう。
まとめ
まとめ・その他、記載していないメモです。
- 脳は、シングルタスクでないとミスを起こす。
そして確実性を好み、考えやすい方向に行きがちになるので、チャレンジ精神とは逆の傾向になりがち - 脳の特性を理解して、捉え方を変えて、仕事が成功する思考を身につける
- 思考が変わる。行動も変わる。人生も変わる。
- 自分も相手も人間である、相手を見て仕事をする
余談
アドレナリンとエピネフリンは同じものラテン語でadは副、 ren は腎臓を意味するので、 adrenaline は副腎のホルモンの意味になる。 同様にギリシャ語で epi は副、 nephr は腎臓を意味するので、エピネフリン epinephrine はアドレナリンの別名である。