7月書き上げた書籍「ユーザビリティテスト実践ガイドブック」の第5章でステップバーを紹介していますが、今回の記事は書籍より深ぼった内容をご紹介します。
まず、ステップバーは、プロダクトの目的や状況によってユーザーインターフェイス(UI)は異なります。プロダクトに沿った情報をデザインにすることが大切です。
一般的に、入力フォームにはステップバーを付けてしまいがちですが、ユーザーが認識しなくても分かるような簡単なステップは必要ありません。
図のように、入力から確認、完了のような簡単なステップを1から3のように表示する必要はありません。
ステップバーが必要な場合
ステップバーは、複数のステップで進行するプロセスや手順がユーザーにとって不明確で理解しやすいように使用します。例えば、次のような場合に有用です。
1. 複数のステップがあるフォーム入力
- 会員登録
- 購入手続き
- サービス申し込み
2. プロセスの進捗を示す必要がある場合
- 購入プロセスの進行
- オンボーディング手順
3. 複数のページやセクションにまたがるタスク
- 申し込みプロセス
- アカウントの設定
ECサイトでおせち料理を注文する場合
初めて使うあるECサイトで、実家に送るおせち料理を注文しようとしました。
おせちを選択し、住所を含む会員登録をフォームに入力した後、[注文する]というボタンが表示されていました。
一瞬、「これで[注文する]を押して良いのかな?」と迷いましたが、「まだ続くだろう」と思い、ボタンを押すと購入完了となってしまいました。
会員登録のために入力した住所とは異なる実家の住所におせちを送りたかったのに、結果的に現住所の情報で購入してしまったため、当然、注文完了後に変更の問い合わせをしなければならず、多くの手間を取るはめになってしまいました。
これは、ユーザーのミスもカバーするポステルの法則にも反しています。
ユーザーは様々な状況でサービスを利用しています。ユーザーが間違ってしまうことも想定して設計する必要があります。
上記のタイミングで表示される[注文する]ボタンは、ユーザーが迷う原因となります。
注文内容の確認画面を入れることも重要ですが、仮に確認画面がなかったとしても、ステップバーがあればどの過程かが分かるため、引き返すこともできます。
ECサイトのチェックアウト表示方法を考えてみる
以下の項目をステップバーで表示する場合、どのように表示させると良さそうでしょうか?
- 商品選択
- 決算(クレジットカード・振込・コンビニ・代引き・PayPay)
- 住所・相手先の名前
- 届け日・時間
- のし
- その他
全てを表記すれば良いというわけではありません。
ステップバーは、ユーザーが今どの段階にいるのかを視覚的に理解しやすくするためのものです。
例えば、保険や学校、銀行など、 5ページ以上に跨るようなページの遷移があり、多くの個人情報を入力しなくてはならないフォームの場合は、以下のように表示すると良いでしょう。
①進捗を色で表す
②残りのステップを明記する
扇風機の風量調整はどう表示すると分かりやすい?
銭湯に行った時、お風呂上がりに涼むため、脱衣所にあった扇風機をつけました。
1つずつ風量が上がる仕組みで強い方に切り替えようとしたところ、数値で表示されました。
数値しか見えないので3段階が最大の風量が分からず、ボタンを4回押して1に戻ったので気が付きました。
この様な風量調整は、『弱•中•強』で表示することでボタンを押す前に最大の風量を予測することができます。
フォームの項目は、カテゴリごとに分けてステップバーをつける
あちこち話が飛ぶ人の話は何を言いたいのかわからなくなりますし、集中力も切れてしまいます。つまり、脳が疲れてしまいます。
ウェブサイトでも、商品のカテゴリがぐちゃぐちゃになっていると認知不可が高まりますし、入力フォームでも同じことが言えます。フォームの場合は、カテゴリーごとに分けるだけでも脳に余計な負荷をかけません。短期メモリに入りやすいように、項目ごとに6~8個ずつ表示すると良いでしょう。ただし、あまりにも分けすぎて長くなってしまうのも問題です。そこで出番になるのがステップバーです。
人はゴールが見えると頑張れるという心理があります。この現象は心理学用語では『エンダウド・プログレス効果』と呼ばれます。長くなってしまうフォームでは、ステップバーの活用することで、終わりが見え、心理的な負荷が軽減されます。
事前に伝えることで脳への負担が軽減される
前回の記事「ECサイト:グリーンビーンズ」の例でも紹介しましたが、「10,000円以上の買い物で、800円割引になります。」のような条件のある情報は、ユーザーが事前に把握すべきです。後から表示されると精神的にダメージがあるので、タイミングがとても大切になります。重要なのは、人の感情に沿って設計することです。
UIを作成したら必ずテストを実施し、実際のユーザーの操作の手軽さと心理に適しているかどうか検討しましょう。テンプレートに頼りきらず、ユーザー視点でどのようなUIが必要かのアプローチが重要です。
※ご紹介した事例について
本記事で取り上げさせていただいたWebサイトやアプリは、他のサービスでも同様の課題が見受けられ、今回はたまたま事例として取り上げさせていただきました。
決して貶すつもりはなく、むしろ日本のUIが向上する一助になればとの思いから題材にしました。