2021年9月15日に「バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る」のUX読書会を開催しました。
ビジネスモデル・キャンバスの提唱者の本なので、ビジネスプランコンテストにエントリーされた方や、新しくビジネス・プロダクトを考える仕事の方も参加されていました。
バリュー・プロポジションはビジネスに不可欠
バリュー・プロポジション(以下、VP)とは「価値提案」という意味です。顧客は、価値のあるものにしかお金を払いません。顧客の対価に見合う価値を、バリュー・プロポジション・デザインで見出していきます。その際、利用するのが、バリュー・プロポジション・キャンバス(以下、VPC)のフレームワークです。
読書会のおかげで、大きな間違いに気づく
自分なりに書籍を理解してVPCを描いたのですが、恥ずかしい間違いをしていました。先にサービス内容を記載するという間違いです。
描いたのは「オウンドメディアの立ち上げ・運用の代行サービス」のVPCです。結果的に、決まっているサービス内容に沿った、顧客プロフィールを描いていました。サービスに顧客を当てはめてしまってしまい、理想の顧客像を作ってしまう失敗をしていました。
これではVPCを描いた意味がありません。顧客のニーズを率直に描くために、まず顧客プロフィールを作り、ニーズにフィットする価値をVPCに描くのが通常です。
何のためのフレームワークか理解しているつもりだったのですが、描くことにフォーカスしてしまっていたと反省しています。このミスは書籍でも紹介されていて、読書会に参加したことで、間違った理解だったと気がつく事ができました。
顧客視点で価値提案を設計する
価値提案(VP)は顧客視点が重要です。私の失敗のように、企業が押したいサービスに合わせてVPCを描いてしまうと、価値提案ではなくなってしまいます。
プロダクトを提供するんだ。というマインドからよく間違ってしまうのですが、価値は顧客に与えるものではなく、顧客が感じるものだということを忘れてはいけません。
以降は、顧客視点で価値提案を設計する例を紹介します。
ジョブ・ペイン・ゲインを探して深堀りする
価値提案(VP)には、顧客のインサイトを探るためにインタビューや行動観察などが大切です。インタビュー調査では、顧客に「なぜそうする必要があるのか」と質問することで、ジョブを知ることができます。行動観察調査では、ジョブ・ペイン・ゲインになる行動を調査します。顧客視点で問題や願望が見え、それが叶えば価値になります。
価値提案を言語化して、ソリューションのズレをチェックする
顧客のゲインを明確にし、ペインに対してソリューションを考えても、すぐに技術や機能に目がいき、顧客への価値提案(VP)から外れてしまいがちです。そこで「アドリブ」という手法で、価値を言葉で表現し、ソリューションのズレを確認します。
アドリブの文章(テンプレート)
わたしたちの「プロダクト・サービス」は、「ゲイン」を得る(もしくは、「ペイン」を取り除く)ことによって、「ジョブ」をしたい「顧客セグメント」を助けます。
書籍「バリュー・プロポジション・デザイン」の販売をアドリブに入れた例
わたしたちの「本」は、「誰も欲しがらないものを避け」、「進捗を測る明確な指標を作ること」によって、「事業を改善したり、事業を立ち上げ」たい「ビジネスマン」を助けます。
企業都合で価値提案が崩れないようにする
人的リソースの不足や納期など、企業側の都合で、サービス内容に変更が生じる場合があります。サービス内容が変われば、価値提案が危ぶまれます。
価値提案を実現した時の収支を考えるビジネスモデル・キャンバス(以下、BC)とVPCを行き来し、価値提案を保ちながらビジネスモデルを設計します。BCとVPCは、入れ子の関係になっていて、BCの中の「顧客」と「価値提案」にフォーカスしたものがVPCになります。
太陽光発電機のリース提供の例
書籍では、BCとVPCを行き来して価値提案(VP)を実現させる方法について、アフリカの農村部の人々に太陽光発電機を例に紹介されています。
アフリカの農村部の人には、火事や事故が少ない太陽光発電機のニーズがありますが、収入に見合わない価格なので、高くて買えないペインがあります。そこで、VPCを使って価値提案(VP)として発電機のリースを提供するソリューションを考えます。
VPCをBCに入れ込むと、発電機のリースは、毎月の利用料が収益となります。しかし、利用料を請求する銀行口座が必要になります。
VPCに戻り、農村部の人々を調査した結果、大多数は銀行口座を持っていないことがわかりました。
その問題に対して、電気購入用のプリペイドカード(書籍ではスクラッチカード)を販売するというアイディアを考えることができます。
再度BCに戻って、プリペイドカードでの収益に変更して、他に問題がでないか確認します。
ファーストアイデアでも、BCやVPCを繰り返し見直すことで、顧客に提供するのに無理のないソリューションに進歩させることができます。
みんなで理解する読書会ならではの学び
読書会では、書籍を理解して発表しなければならないことや、人の発表を聞くことで、違う角度で物事を考えられます。
おかげで、自分の愚かなミスだけでなく、VPCの奥深さまで理解できました。顧客に価値をもたらすために、何がジョブ・ペイン・ゲインなのか、本気で考えることができました。
読書会に参加したことで、独学で書籍を読んで、正しく理解せずに流し読みしていた自分に気がつくことができました。これらに気がつくことができなければ、自分の現場でVPCは使えないと勘違いしてたかもしれません。今後は、顧客にとっての価値を知るツールとして現場でガンガン活用していきたいです!