こんにちは。UX DAYS TOKYO スタッフの高橋です。UX DAYS TOKYO主催の毎月恒例のUX読書会、今回は『Zero to One(ゼロ・トゥ・ワン) 〜君はゼロから何を生み出せるか〜』を取り上げました。
読み始めた当初、こんなことを思っていました。
「経営者でも起業家でもない自分に、ゼロイチなんて難しいことは無理!」
しかし、書籍を読み進めるうちに、現場でも役に立つ多くの視点を得られることに気づきました。
ゼロイチは、ゼロから創造することではない
書籍では、ゼロイチとは誰もやっていないことを神のように生み出すことではありません。
読書会で得られた大きな学びは、本当に大事なものは、見えづらい、わかりづらいということです。
みんなが当然と思っている前提を疑い、目に見えるもの、わかりやすいものへの引力に気づき、もっと本質的な課題に取り組むことが「ゼロイチ」なのです。
現場は変わっていないから、まだAIに仕事を奪われない?
著者の一人であるピーター・ティール氏は、PayPalを創業し、FacebookやSpaceXなどのユニコーン企業の投資家として有名です。彼がいう本当の進化とは垂直的であり、既存のプロセスや役割を大きく変えるものだそうです。その意味で昨今のAIの急激な発展は、私たちの世界を進化させる可能性が高いと言えます。
確かに生成AIで仕事の効率は上がりました。ただ、正直なところ、現場において仕事のプロセスや考え方は大きく変わっていません。
「AIが発達しても現場は大きく変わってない。だから、AIに仕事を奪われるのはまだ先かもしれない。」
そんな安易な思いで正直今まで過ごしていました。

「改善してるから大丈夫」という楽観主義が「茹でガエル」への入口
ティール氏はこの状態を「曖昧な楽観主義」と呼んでいます。数字は改善され続けているし、AIも活用している、だから大丈夫なはずと思っていて、大きな変革を必要としない。これは今の私たちにそのまま当てはまります。
このあいまいな楽観主義は、今の私に限った話ではなく、多くの企業に陥りやすいとティール氏は述べています。四半期ごとの数字、短期のKPIによって、目に見える「わかりやすい」改善を積み重ねて「前に進んでいる」という感覚を得ることで、根本から問い直す必要性が見えにくくなるのです。
「茹でガエル」という言葉があります。水温がじわじわ上がる環境では、危機を感じないまま限界を超えてしまいます。曖昧な楽観主義のなかで現状維持しているあいだ、AIが担える仕事の範囲は静かに広がっています。気づいたときには、自分たちが解くべき問いを考える余白も、立場も、なくなっています。それが「AIに仕事を奪われるとき」です。

競争という「わかりやすさ」の引力
「わかりやすい」改善に引き寄せられ、現状を維持する典型が、企業間の競争です。競合をコピーすることで数字は改善し、競合に劣ると数字が悪化します。だから、似たような相手と似たような領域で争うことに、自然と向かっていきます。
ティールは競争を疑いなく信じ込まれた「イデオロギー」としています。読書会の参加者の一人が「競争こそがビジネスだと思っていたが、発想が覆された」と言っていたのはその象徴といえます。
本書では、MicrosoftとGoogleがOSと検索の覇権を争い続けた結果、両社ともに弱体化し、そのあいだにAppleが独走した事例が取り上げられます。競争に没頭した両者は、新しい価値を生み出すどころか、お互いを傷つけ合うことに資源を注ぎ続けていたのです。

「重要だがわかりづらいこと」に価値が眠っている
ティール氏がいうゼロイチとは、誰もが知っているのに、誰も本気で問題として扱っていないもの、つまり「隠れた真実」を見つけることそのものです。計りにくく、比べにくく、数字にならないものにこそ、本当に新しい価値が眠っているというのです。
この言葉を自分の現場に当てはめて考えたとき、それは「人であり、組織ではないか」と考えました。
成功している企業の強さが組織にあることは、薄々みんな知っています。しかし、組織は外から見えづらく、数字になりづらい。比べられないから、本気で設計する人がいない。まさに「隠れた真実」の条件をそのまま満たしています。

そしてティール氏自身も、ゼロイチを成功させる企業には、会社への帰属意識以上の「使命を共有する」文化があると言います。PayPalで活躍した人々は退職した後も、相談相手やビジネスパートナーとして強い関係性を持っていたそうです。
新しい価値を発掘できるのは人間だけ
誰も本気で目を向けていない課題を見つけられるのは、人間だけです。AIは与えられた問いを解くことが得意ですが、「そもそも何が問題か」を問い直すことはできません。ゼロイチを考えられる人は、AIに仕事を奪われません。

まずはモヤっとしている重要だと思うことを話してみる
とはいえ、いきなり「隠れた真実を探せ」と言われても難しいです。まずは、自分がモヤモヤしていることを言葉にしてみるところから始められます。解決策は後でいい。「なんとなくおかしい」「うまくいっていない気がする」、その感覚を一人で抱えず、信頼できる同僚や先輩と1on1を組んで言葉にするのが良いと思います。

ティール氏は、隠れた真実を本当に必要な人だけに話すことべきだと述べています。わかりづらい、理解を得にくい問題であれば、アイデアを受け入れられる人は限られます。信頼できる少人数との対話が、漠然とした取り止めのないことも仮説になる出発点になります。
参加者の発言が学びにつながる!読書会の魅力
ドットコムバブルをリアルタイムで体験した参加者から、印象的な発言が出ました。「早く手を出しすぎて資金が尽き、次の事業に移っている間に時代が追いついてくる、というパターンをよく見てきた」。不確実な不安に耐えきれずにピボットしてしまう。まさに「わかりにくさ」に耐える難しさと、数字など目に見える動きの引力の強さを感じたことが、今回の私の学びに繋がったと言えます。
UX DAYS TOKYOの読書会は、単に本を読むだけではありません。問いを投げられ、多様なバックグラウンドを持つ参加者と議論することで、自分一人では気づけなかった「思考の偏り」に気づくことができるのが最大の魅力です。
自分では得にくい学びの場があるということは本当に希少です。少しでも本記事を読まれた方が読書会に参加し、継続的に広がっていくイベントになることを祈っています!

