
学問としての「デザイン」手法と実践が、どのようにして実際の現場の「デザイン」に、どのように役立つかを解説します。
「常に、従うべき『デザインプロセス』がある」と主張する人もいるかもしれません。しかし、そんなものはありません。その理由を掘く考えてみましょう。
デザインガイド 3 の目標(ゴール)
自分や現場での最適なデザイン手法を選び、クイック・リファレンスガイドがまとめられるようになること。

「デザイン」は規律を必要とする学問
良いの結果を出すために、次の3つポイントをしっかり抑えましょう。
- 正しい問題に集中する
- 実現可能な解決策を考える
- 学んだことを実際に機能するデザインに落とし込む
デザイン手法は、この3つを進めるための技術や方法です。
問題を調査すること、解決策を考えること、そしてそのアイデアを検証すること。
それらに役立つ手法がたくさんありますが、その数の多さや名前に圧倒されるかもしれません。
「カードソートのベストプラクティス」や「ユーザーテストのミスを防ぐ方法」などの本や記事もたくさんあります。しかし、それらだけではデザインの本質には触れていません。
デザインで最も大切なのは、「デザインとは問題解決である」という点を忘れないことです。
優れた戦略的デザイナーは結論に安易に飛びつかず、問題を徹底的に理解し、そのプロセスを周囲の人とも共有する必要があると心得ています。
“デザインは、誰かが使って初めて完成する。”
Brenda Laurel
「デザイン」を進めるための第一歩
私は仕事で、「モバイルアプリに新しいソーシャルシェア機能を追加して欲しい」といった依頼を受けることがあります。また、面接の時にも、「1000階建てのエレベーターのインターフェースをデザインできますか?」というような質問が出されたことがあります。
ここで大事なのは、一歩立ち止まって考えることです。
求められたものだけをデザインしようという誘惑に負けないようにしましょう。
デザインの手法を使って、正しい質問をすることが大切です。
例えば、エレベーターのデザインについて考える場合、次のような質問をしてみましょう。
- 誰がエレベーターを使うのか?
- よく使われる階はどこか?
- エレベーターに乗る前に、建物内でどう移動しているのか?
- どうしてエレベーターを使うのか?
- いつエレベーターを使うのか?
- 安全に感じているか?
- 使わない人は誰か?
- 使えない人は誰か?
- なぜ1基のエレベーターで1000階建てのビルを支えようとしているのか?
- そもそも1000階建てのビルが必要なのか?また、そのビルは周囲にどう影響を与えるのか?

「デザイン」は簡単ではない
デザインを学ぶときに大切なのは、「まず基本を知ること」。
最も一般的な方法を理解したうえで、それを自信を持って使いこなせるようになるには、どうしても時間がかかります。
はじめから完璧を目指す必要はありません。練習を重ねることで、少しずつ上達していくものです。
プロジェクトに取り組むときは、各ステップで「何を達成したいのか」という具体的な目標を決めましょう。
そのうえで、その目標に合った手法を選んで取り入れていくのが効果的です。
学びながら、実践を重ねる。
この姿勢を何年も続けていくことが、デザイン力を育てる一番の近道です。
おすすめの本や記事
UXに取り組み始めたい人や組織への導入がうまくいかずに悩んでいるチームに向けて書かれた実践的なガイドブックです(Amazonより引用)。
Leah Buley著。
お近くの図書館で借りるか、ネットや書店で買ってみましょう。
2. 決め打ち手順に縛られないデザイン思考(Description or prescription?)
Aga Szóstek (5分)
3. UXデザインの手法と成果物(UX design methods & deliverables)
Fabricio Teixeira, Caio Braga (17分)
4. デザインプロセスの違いによる錯覚(The illusion of different design processes)
Maximilian Schmidt (4分)
5. デザイン思考について(On design thinking)
Maggie Gram (20分)
6. デザイン批評と創作活動(Design criticism and the creative process)
Cassie McDaniel (12 分)
7. プロセスから主観を取り除く方法(How to remove subjectivity from the process)
Stuart Silverstein (19分)
8. デザインの地味で目立たない中盤工程(Design’s unsexy middle bits)
Christina Wodtke (12分)
自分に合ったデザイン手法を見つけよう
たくさんあるデザイン手法の中で、「これ、試してみたい!」と思えるものはありましたか?
まずは、自分がワクワクする手法を見つけることが、学びの第一歩です。
手法によっては、人と対話しながら進めるソフトスキル型(例:ユーザーテストのモデレート)もあれば、ツール操作や構築が中心のテクニカルスキル型(例:プロトタイピング)もあります。
- 今の自分は、どちらのスキルに自信がありますか?
- すでに得意なことや、自然にできていることは何ですか?
少し視野を広げて、これからの5年間でどんなスキルを身につけたいかも考えてみましょう。
そして、そのスキルをどう伸ばしていけるか、自分なりの道筋を描いてみてください。
あなただけの「クイックリファレンスガイド」を作ろう
これまで学んだ手法を、自分なりにまとめて整理してみましょう。
たとえば:
- デザインガイド1で見つけた、ポートフォリオでよく使われていた手法
- デザインガイド3で学んだ、実務で役立ちそうな方法
これらをひとつにまとめて、自分専用の「クイックリファレンスガイド」を作ってみてください。
- 特に気になる手法、もっと深く学びたいものはどれですか?
- 実際のプロジェクトで試してみたい手法はありますか?
“自分だけの道具箱”を育てていく感覚で、ひとつずつ増やしていきましょう。
日々の実践や気づきが、あなたらしいデザインスタイルをつくっていきます。
本記事はUX CollectiveのThe Guide To Designの翻訳です。配信元、または著者の許可を得て配信しています。
翻訳担当:池田茉莉花・推敲:森・監修:菊池聡