
「ただデザインを作る」ことを超えて、デザインの持つ力を理解することができれば、私たちは世界に広く影響を与えることができます。
デザインは単なる作業ではなく、社会に変化をもたらす手段です。そしてその行為には、必ず責任が伴います。
あなたは、どのような変化を起こしたいと考えていますか?
デザインガイド4の目標(ゴール)
デザインの意思決定の影響力を意識しましょう。

ソーシャルメディアが中毒性を生むことや、位置情報アプリがプライバシーのリスクを伴うことを、ニュースなどで耳にしたことがあるでしょう。
ほとんどのデジタルプロダクトは善意で設計されていますが、リリース後の使われ方までは、完全にコントロールできるわけではありません。
建築家が建物の安全性を考慮するように、デザイナーにもプロダクトが社会に与える影響を考慮する責任があります。
企業に所属するデザイナーとして、より多くのエンゲージメントやPV、利益を求められる場面は多いでしょう。しかし、私たちはその過程で、ユーザーの権利を守るための声を上げることも忘れてはなりません。
誤情報や中毒性、不正利用につながるリスクに対して、異議を唱える勇気を持ちましょう。どのような行動や判断が「越えてはいけない一線」であるかを理解することで、デザインが悪用されることを防ぐことができます。
“快適さよりも勇気を選び、共感を理解し実践するなら、それは言葉だけの“人間中心デザイン”にはなりません。”
Vivianne Castillo
インクルーシブでアクセシブルなプロダクトを作る
プロダクトは、誰もが使えるものであるべきです。
「アクセシビリティ」とは、さまざまな能力や背景を持つ人が、平等にそのプロダクトを利用できるかどうかを示す考え方です。
デザイナーはつい、自分と似たユーザーを想定してしまいがちですが、実際には年齢、身体の状態、文化的背景など、多様な条件を持つ人たちが使っています。
UXデザインやユーザー参加型デザインは、作る側と使う側のあいだにあるギャップを埋める考え方です。インクルーシブデザインもまた、人と人の間にある「見えにくい距離」を縮めていくためのアプローチです。
これからデザインコミュニティと関わる中で、「アクセシビリティ」という言葉を目にする機会は増えていくでしょう。
アクセシビリティのガイドラインを守るのは良いスタートですが、それだけでは不十分なこともあります。誰にとっても使いやすいプロダクトを目指して、よりよい方法を自分たちで提案していくことが、デザイナーの役割です。

デザイン倫理、インクルーシブデザイン、アクセシビリティといったテーマは、一朝一夕で習得できるものではありません。しかし、UXを学び始めた今だからこそ、それらの意義を理解し、オープンな姿勢で学び続けることが重要です。
記事・書籍リスト
デザインを、安易な消費者神話の上にあぐらをかいた専門家たちの手にまかせきってはならない。人びとが本当に必要としているものへの綜合的なアプローチによって、空きかんラジオから人力自動車まで、パパネックは、豊かな思考と実験に支えられたかつてない生態学的デザインを追求する。世界的反響を呼んだ「パパネック理論」の完訳本。
(晶文社HPより引用)
(訳注:1974年に発売されたデザインの古典良著が、2020年に再発売され、注目が高まっています)
2.Accessibility for Everyone(翻訳版なし)
アクセシビリティのためのガイドで、誰でも利用できるデザインの設計、評価、テストの方法を学べる書籍です。ローラ・カルバッグ著。
書籍Accessibility for EveryoneはA Book Apartにて電子書籍が購入できるほか、Amazon Audibleでオーティオブック版を購入できます。(書籍公式ページ)

3. リスペクトは価値のひとつ(Respect is the one value)
Cyd Harrell (6 min)
4. 多様、包括的、公平なデザイナーのための未完成な資料リスト(An incomplete list of resources for the equity-centered designer)
Isabelle Yisak (6 min)
5. テック業界の白人至上主義に立ち向かう時がきた(It’s time we dealt with white supremacy in tech)
Tiffani Ashley Bell (6 min)
6. 多様性とデザイン:シリーズ(Diversity & design: a series)
UX Collective (45 min)
7. アクセシビリティを考慮した設計はそれほど難しくない(Designing for accessibility is not that hard)
Pablo Stanley (12 min)
8. デザインの政治学(The politics of design)
Ruben Pater (15 min)
9. 悪のデザイナー連合(The league of evil designers)
Linnéa Strid (6 min)
10. 正義のためにリデザインするデザイナー:公平な未来のために必要なリーダーたち(Redesigners for Justice: the leaders we need for an equitable future)
Creative Reaction Lab (5 min)
動画リスト
1. ソーシャル・インクルーシブなデザインシステムの構築(Building socially-inclusive design systems)
Tatiana Mac
2. アクセシビリティのためのデジタルスタイルガイドを工夫する: タイプ、色、イメージ(Hacking digital style guides for Accessibility: type, colour, imagery)
Tatiana Mac
3. コミュニティ+テクノロジー = ポジティブな社会変容(Community + technology = positive social change)
Ellen Ward and Máirín Murray
4. アートが文化の変化をどのように形づくるか(How art gives shape to cultural change)
Thelma Golden5. 無害なデザイン:公平性を目指す旅に謙虚さが必要な理由(Design No Harm: Why Humility is Essential in the Journey Toward Equity)
Antionette D. Carroll
深く考えてみよう
アクセシビリティ、インクルージョン、ダイバーシティの違いは何か?それぞれをデザインにどう適用できるか、実例を挙げてみましょう。
アンケートの性別選択肢(通常「男性」は「女性」よりも前に記載されています)に見られるようなバイアスに気づいたことはありますか?普段使っているプロダクトやサービスの中に、同様のバイアスはありませんか?
デザイナーに求められる社会的責任と実践
私たちデザイナーは、起きてしまった問題の改善だけでなく、最初から問題が起こらないようにする役割も担っています。
ベテランであっても新人であっても、自分たちのデザインが社会に与える影響を理解し、常にその視点を持ち続けることが重要です。
たとえば、以下のような事例があります:
こうした出来事は、デザインの判断が社会にどれほど大きな影響を持つかを私たちに教えてくれます。(事例記事1、事例記事2)や実践的なガイドを読んで学ぶことで、より責任ある判断ができるようになります。
この章で得た視点を活かし、普段使っているアプリやサイトに目を向けてみましょう。
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The Guide To Design 目次
トップページ – UXデザイナーへのガイド
デザインガイド1: なぜデザインするのか?なぜ今?
デザインガイド2: 業界の概要
デザインガイド3: 本物の「デザイン」
デザインガイド4: 目的とコミュニティ(←今ここ)
デザインガイド5: 情報アーキテクチャ
デザインガイド6: ユーザーと対話する
デザインガイド7: 見た目と機能のバランス
デザインガイド8:デザイナーの仕事
デザインガイド9:これからの道
UX業界には、異なるタイプのデザイナーがもっと必要:The Guide To Designをまとめた理由
本記事はUX CollectiveのThe Guide To Designを配信元・著者の許諾のもと翻訳転載したものです。
(翻訳担当:池田茉莉花・推敲:小蕎麻衣・監修:菊池聡 )