TOP 組織・ファシリテーション コンテキストを理解する(切り口-5: パーソナル)

コンテキストを理解する(切り口-5: パーソナル)

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、コンテキストも含め、それ以外の洞察を得ることができます。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、リサーチがいかに大切かが分かります。 リサーチから見つけた様々なコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いのでしょうか。

例えば、コンテキストを単純に分類しても、それはあくまで近似値にしかなり得ません。なぜなら、その分類結果は、コンテキストが溶け込んでわかりにくくなってしまっているから可能性が高いからです。

私は、コンテキストを7つの「切り口」で分類しました。これを使えば、コンテキストの重要性を理解することができるでしょう。

  1. 切り口-1: デバイス
  2. 切り口-2: 環境
  3. 切り口-3: 時間
  4. 切り口-4: 行動
  5. 切り口-5: パーソナル
  6. 切り口-6: 場所
  7. 切り口-7: ソーシャル
  8. コンテキスト・デザインの5原則

本記事では7つの切り口のうち5つ目の「パーソナル」について取り扱います。

切り口-5: パーソナル

デザインには身体の能力とその限界についても考慮することが重要です。戦前に、デザインをするために人体計測と人間工学をより深く理解しようと取り組み続けたHenry Dreyfussヘンリー・ドレイファス氏の努力は、現代のテクノロジーにもいまもなお影響を与え続けています。

入力における物理的要因の影響は甚大です。個性のコンテキスト、すなわちユーザーの性格や心の状態、好き嫌いなどは、個人差があるため研究するにはなかなか難しいものですが、いくつかのパターンが見えてきています。

デバイスの形態は、そのデバイスに何ができるかだけではなく、そのユーザーと感情的な関係を築けるかどうかというところにも影響してきます。

例えば、スマートフォンに対する一般的なユーザーとの距離がこれをよく表しています。スマートフォンを常にユーザーと共に、あるいは少なくとも手の届くところに置いていると親しみを感じ、そこにパーソナルスペースを見出します。

パーソナルスペース(「近接学」)の認識に関するEdward T. Hallエドワード・T・ホール氏の研究によれば、人はそのスペースを親友や家族、恋人のために確保している場所だと言われます。

スペースの区分けイラスト

スペースの区分け / (左から)親しい、個人的、社会的、公共

自分の携帯電話(スマートフォン)との感情的な繋がりを築き始めても驚きはありません。それらは、私たちが秘密を打ち明けられるパートナーであり、かつ超人的な力を与えてくれるツールだからです。ゆえに、スマートフォンは、本当の最初のパーソナル・デジタル・デバイスだと言えるでしょう。

パーソナルスペースが侵害されると、人は強く反応します。煩わしいSMSのスパムを誰もが嫌がることや、掲示板での痛烈な議論もそうです。ポータブルデバイスを利用したサービスを考えているならば、ユーザーがそれを使おうと選択した時点で、こうしたパーソナルな性質があることを考えるべきです。

ユーザーの好き嫌いについては、ユーザーの行動によって理解しやすくなります。こうした好みは画面設定にハッキリと表れ、クリックスルーやコンテンツの保存、購入履歴といった過去の行動から推定できます。

インターフェースをカスタマイズするために過去の行動から学習することができる可能性はありますが、そのアプローチは思ったより複雑になります。

Adaptive menus

過去の選択を優先させるAdaptive menusは、デスクトップのソフトウェアに織り交ぜることで成功した例です。ユーザーにとって使いやすいショートカットを提供することができるのですが、理論的根拠が不明確な場合には予測不可能なものと見なすことがあります。

アプリケーションをユーザーの過去の動作にピッタリはめ込みたいのなら、自然による浸食現象や、ゆっくりと時間をかけて履き慣らす靴のように、時間をかけた微々たる変化の積み重ねが重要になります。

2002年のBBCホームページのリデザインプロジェクトは、ユーザーが行ったインタラクションに少しづつと合わせていくアイデアが採用されています。

GLASSWALL図

BBCのホームページTHE GLASS WALLより

色を変えることでユーザーを導線通りに動かせることができるはずです。

各個人向けにページをカスタマイズできるのであれば、最もよく使われる箇所の色を、徐々に彩度が強くなるようにし、それによってより豊かで、より関連性の高い体験を提供できるのです。

このようなユーザーの物の見方やモチベーション、恐怖、およびテクノロジーに対する受け方といった感情的な問題は、当然のことながら、なかなか引き出しにくいものです。

だからこそ、これらの研究には価値があると言えます。ユーザーのインタラクションに繋がるパーソナルのコンテキストについて、手がかりを得るために行うインタビューはしっかりと時間をかけて、注目すべきパターンを見出すべきです。

パーソナルコンテキストを理解するポイント

  • システムを個別のユーザーに適応させるために既定の設定を使うことができるか
  • あるインタラクションに対するユーザーの好みを、ユーザーに示させるのは適切か
  • サイトに対し、ユーザーはどんな種類の感情的なつながりを持つか。そしてユーザーがサイトへのアクセスに使っているデバイスに対してはどうか
  • インタラクションに対し、ユーザーは精神的にどのような姿勢であるか

切り口-6: 場所に続きます。


本記事は、2013年に記載されたケニー・ボールズによるコンテキストの紹介記事を翻訳したものです。

SOURCE

デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー 元Clearleftエクスペリエンスデザイナー

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UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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