デザインガイド 2 ：業界概要

成長を続ける業界、そして進化を続ける分野の中で、自分の居場所を見つける方法。

デザインガイド 2 の目的（ゴール）

デザイン業界の全体像を理解し、自分に適したキャリアパスを検討しましょう。

デザインはビジネスをどう変えるか

企業がユーザー中心のデザインの重要性に気づき始めてから、デザインの役割は大きく進化してきました。ときおり、優れたデザインによって大きな成功を収めた企業の話を耳にすることがあります。デザイン主導の企業は、顧客を第一に考え、従来の枠組みを超えるような新しい体験を生み出すことで、業界全体に変革をもたらしています。同じ課題に対しても、まったく異なるアプローチで解決策を提示しているのです。

かつては「見た目を良くするための手段」と考えられていたデザインも、今ではユーザーのエンゲージメントを高め、ひいてはビジネスの利益を向上させるための重要な戦略の一つとして捉えられています。企業の規模にかかわらず、多くの組織がビジネス目標の達成を支えるデザイナーを求めるようになっています。

デザイナーとしてのキャリアを考える

キャリアパスを描くときに大切なのは、「どこで、どんな働き方をしたいか」を考えることです。大手テック企業、小規模スタートアップ、コンサルティング会社、非営利団体、中小企業、あるいはフリーランスとして独立するなど、さまざまな働き方があります。

専門領域も幅広く、UXリサーチ、ビジュアルデザイン、UX戦略、コンテンツライティング、情報設計（インフォメーションアーキテクト）、モーションデザインなど、多様な選択肢があります。どんな道を選ぶとしても、自分の可能性を理解し、意識的にキャリアを築いていくことが重要です。

“良いデザインにコストがかかると思うなら、悪いデザインが引き起こすコストを見るべきだ”

Ralf Speth

デザインが企業にもたらす価値

デザインが企業にとって本当に価値あるものになるのは、顧客の声に耳を傾け、期待やニーズを深く理解したときです。期待を上回る体験を提供し、真の課題を解決できる企業は、結果として顧客のロイヤルティやブランドへの信頼を得ることができます。

あなたが好きなブランドについて考えてみてください。ウェブサイトやアプリなど、さまざまな接点を通じて、良い体験をしたことがあるのではないでしょうか。それがまさに、ユーザー中心のデザインが生み出す価値なのです。

デザインへの投資がもたらす未来

企業がデザインの影響を数値で示せるようになると、デザインへの投資意欲は一気に高まります。モダンな企業では、デザイナーの採用やプロダクトチームの拡大、組織内でのデザインの影響力を強化することに収益の一部を使うケースが増えています。これは、これからキャリアを始める人にとって、非常に希望に満ちた環境だと言えるでしょう。

デザイナーは一人で仕事をするわけではありません

デザイナーは、単独で仕事を進めるわけではありません。モックアップやプロトタイプなど、仕事の中で作る「デザイン成果物」は、ユーザーが実際に触れるプロダクトの設計図です。プロダクトマネージャーは、それをもとに機能の優先順位を決めたり、ビジネス上の判断を下します。開発者は、それを参考にして、デザイナーが考えた通りに製品をつくれるようコードを書いていきます。

デジタルプロダクトのデザインは、さまざまな専門分野のメンバーが力を合わせて行うものです。デザイナーとして働く中で、開発者やプロダクトマネージャーと協力し、ユーザーにとって最高の体験をつくる方法を学んでいくことになります。その中では、「その機能は技術的に実現できるか」「ビジネス的に価値があるか」といったバランスも考える必要があります。

たとえば、すばらしいアイデアでも、実現不可能だったり、コストがかかりすぎて会社の利益にならなかったりすれば、意味がないかもしれません（もちろん例外もあります）。デザインは会話です。さまざまな立場の人と意見を交わしながら進めていくものなのです。

ここで紹介したのは、チームの関わり方のごく一部にすぎません。実際には、デザイナーはマーケティング、ブランド、法務、データサイエンス、カスタマーサポートなど、組織のさまざまな部門と連携して仕事を進めます。

でも、心配しないでください。この章の読書リストでは、デザイナーが関わる他の職種や、その関係性についてもっと詳しく知ることができます。

記事・書籍リスト

1.Designing for the Digital Age: How to Create Human-Centered Products and Services（翻訳版なし）

デジタル時代に成功する製品やサービスを設計するために必要な、幅広い領域にわたるチームの概要を学べます。キム・グッドウィン著。
（訳注：キム・グッドウィンはアラン・クーパーと共にペルソナを考案した人で、”Designing for the Digital Age“にも正しいペルソナの作り方が書かれています。）

2. アートとデザインの違い(The difference between art and design)
John O’Nolan (4 分)

3. UI, UX：誰が何するの？テック業界のデザイナーガイド(UI, UX: who does what? A designer’s guide to the tech industry)
Lo Min Ming (8 分)

4. 初めてのデザイン職の選び方：スタートアップ？大企業？フリーランス？(How to choose your first design gig: startup, corporate, or freelance?)
Alexis Collado (7 分)

5. 本当にデザイン重視の会社か見分ける5つの方法(Five ways to tell if a company is really design-driven)
Ryan Quintal (7 分)

6. インターフェイスを愛するデザイナーインタビュー(Interface lovers: interview with designers)
William Channer, Timothy Achumba, Iheanyi Ekechukwu (~30 分)

7. 学生とデザイン業界の断絶(The disconnect between students and the design industry)
Sanjana Galgalikar (9 分)

8. ユーザーインターフェース設計のための10のヒューリスティック(10 heuristics for user interface design)
Jakob Nielsen (45 分)

動画リスト

1.ハイレゾリューション：プロダクトデザインとデザイン思考のビデオシリーズ(High Resolution: a video series on product design and design thinking)
Bobby Ghoshal and Jared Erondu

2. 堅苦しくなく、真面目なデザインこそ素晴らしい(Great design is serious, not solemn)
Paula Scher

3. UXデザイナーの仕事とは？(What does a UX designer do?)
TechCrunch

深く考えてみよう

• あなたにとって「理想のデザイナーの仕事」とはどんなものでしょうか？
• どんなデジタル製品やサービスを、誰のために、どんな業界で作ってみたいですか？
• その製品は、どのようなチャネル（アプリ、ウェブ、音声など）で届けられるでしょうか？
• 尊敬している企業のニュースを聞いて、「この企業でデザイナーとして働きたい」と感じる理由は？ 実際にそのチャンスが訪れたら、どう感じると思いますか？
• あなたの毎日の中で、よく直面する3つの課題を思い出してください。そのうち、良いデザインで解決できそうなものはどれですか？逆に、デザイン以外のアプローチが必要なものはありますか？

実践：ニールセンのユーザビリティ原則

ヤコブ・ニールセンは、ユーザビリティのチェックリスト「10のヒューリスティックス（経験則）」を定義したことで知られています。このリストは今も業界で広く使われており、この章の学びにも含まれています。

ぜひ、デザイナーがどのようにこのチェックリストを活用しているかを観察し、自分でも試してみてください。たとえば、あなたがよく使うアプリを1つ選び、習ったことに基づいて分析してみましょう。

次は、いよいよ本物のデザインについて

デザインガイド3: 本物の「デザイン」